◆伝説のさなぼり焼酎・蒸留◆
PART2



 同様に、三層目のセイロがセット完了。  最後に、最上段にのせるこれが明治・大正期の「かぶと釜」です。

 銅製のかぶと釜です。いくら保存状態が良かったとはいえ、手直しは必要だったそうです。しかし、現在では、胴器の職人さんがなかなかいないため、たいへんだったそうです。

 「かぶと釜」をひっくり返して、下から見たところです。中心部分に蒸気(焼酎)がたまって手前に見える管から出てきます。  最上段に「かぶと釜」がセットされて、いよいよ蒸留が始まります。

 「かぶと釜」の頭の上に冷却するために水を循環させます。そして、向かって右のステンレスのタンクの中にも水が溜められ、その中に蛇菅の管が通っています。  ステンレスタンクの中の蛇菅です。

 セイロに隙間があるため、蒸気が漏れてきます。これでは効率が悪いため、赤ぬかと酒粕を混ぜたもので、丁寧に目詰めしていきます。(何故そんなもので目詰めするのかを尋ねたら、口には入るものだから、変なものは使えないそうです。さすが!)  ついに、蒸留が始まってから、約20分後にポタポタと焼酎が垂れてきました。(これが初留です。)アルコール度が70度くらいあります。ひじょうに華やかな香りです。出てくる焼酎の成分が次第に変わっていきます。アルコール度が少しずつ低くなっていき、香りも落着き、旨味のある成分へと変化していきます。

私も、20分おきに飲ませてもらいました。変わっていく風味がハッキリ分かりました。  蒸留が終わりました。かなり白く濁っています。この量は、約60リットルです。つまり一回の蒸留でわずか60リットルしか取れません。信じられないくらい少ない量です。
(モチロンこれでは、商売になりません。作業されている蔵人さんがボヤいていました。「これは、社長の道楽でやっているんですよ。」)

 蒸留が終わり、セイロを解体していきます。湯気が立ち昇ります。これが焼酎カスとなります。

 セイロがひっくり返され、焼酎カスが一箇所に集められます。


下記の器械は、現在の通常の「粕取り焼酎」の蒸留器です。ステンレス製です。
これは、セイロとなる部分です。ここに酒粕を再発酵させたものと籾殻を混ぜたものが入ります。「さなぼり焼酎」に比べると、かなり水と籾殻を多く入れるそうです。(そうすると、取れる焼酎の量が増えるそうです。) これは、「かぶと釜」となる最上部の部分です。


 この「さなぼり焼酎」の蒸留は、一日に約3回行われます。今季は計16回程度の予定だそうです。(一回の蒸留で60リットルしか取れませんから、×16回ですので、極めて少量の超レアものです。)

 実は、この焼酎の蒸留は昨年が第1回目で、今回は2回目になります。蒸留後暫くは、籾殻に由来する新酒の強い芳香があります。これが落着いてくる(熟成してくる)と、まろやかさ、やわらかさが、プラスされてきます。実際に、昨年蒸留した一年ものと、蒸留したてのものを飲み比べてみました。蒸留したてのものは芳香やクセが強く、白く濁っており「飲みにくいなぁ〜。」と感じました。一年ものは、かなりまとまっており、熟成による深みも感じられ、なんとなく吟香露にたっぷりと旨味を加えたもののように感じられました。

 したがって、今回はしばらく様子を見ながら、それが半年になるか一年になるかはまだ分からないが、甕か何かで熟成させ、絶妙のタイミングで瓶詰め、出荷したいとの社長のお話でした。(気長に待ちましょう!)

 今回の、この「さなぼり焼酎」の復活は、まさに焼酎文化の継承です。「杜の蔵」の森永社長がいらっしゃらなければ、「さなぼり焼酎」は二度とこの世に復活しなかったかもしれませんし、その存在すら忘れ去られてしまったと思われます。


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